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令和5年度 第2回 安全教育部会研修会報告

日時:令和5年 7月31日(火)9:50〜16:30
場所:国立オリンピック記念青少年総合センター
内容:第17回 学校の安全・危機管理セミナー
主催:全国学校安全教育研究会 日本安全教育学会 学校安全教育研究所   

1:記念講演(10:00〜)

記念講演 関東大震災100年と我が国の防災の現状
講師 防災教育普及協会会長 東京大学名誉教授 平田 直先生

<研修内容>

(1)日本列島の動きについて

日本列島はプレートの動きにより、1年間に1cmずつ縮んでいたが、東日本大震災のときの3分程度で3〜4m東西に伸びた。10年以上経った今でも東西に伸び続けている。今でも力学的に不安定な状態が続いている。今後も何十年か続き、そのうち元の状態に戻る。この地震は、関西でも起きることが考えられる。⇨南海トラフ巨大地震

(2)南海トラフ巨大地震について

地震の規模 M8〜M9
発生確率 30年以内に 70%〜90%
もしも、東日本大震災級の地震となれば神奈川〜九州全域まで影響が出ると予想される。津波が起きる可能性も十分にあり、起きた場合は市町村のHPなどを活用し、津波到達時間を確認する必要がある。自分の感覚で決して「まだ大丈夫」という考えはもたないこと。余震は本震よりも強いことも考えられる。

(3)防災リテラシー 正しく防災を理解する能力、災害から生き延びる力

・すぐに身の安全を確保する。
・揺れが収まったら家族の安否を確認する。
・出火した際には落ち着いて消火。
・在宅避難に務める(防災備蓄があれば)。ただし、耐震化されていなければ避難所に行く必要がある。
・みんなで避難所に行く必要はない。

わたしたちは、不確実性(リスク)が増大する時代に生きていることを再認識することができた。2011年3月11日の地震の影響が今でも残っていること、南海トラフの巨大地震災害はM9の可能性も大きいこと、日本海溝・千島海溝でも巨大地震が発生する可能性が高いことなどを、これまで起きた大地震と震災から想定し、東京都の防災リテラシーを例として、防災に取り組むための基本知識をご教授していただいた。

2:シンポジウム1(11:10〜12:20)

<パネリスト>
歴史地震研究会会長 松浦 律子先生
東京都教育庁指導部 主任指導主事 加藤 憲司先生
防災教育普及協会常務理事 澤野 次郎先生

松浦律子先生には災害伝承の意義について、ご講話いただいた。「人間は、学習することで生存確率を上げることができる」という言葉が印象に残った。また、関東地震の避難時に、毛布など燃えてしまうものを持っていってしまったことで、火災に発展することがあり、避難所に向かうときは、非常用持ち出し袋1つ分程度の荷物にすることが望ましいと理解した。

加藤憲司先生には、東京都教育委員会の安全教育の取組について、ご講話いただいた。首都直下地震の影響が一番出ると予想されているためか、「安全教育・防災教育ポータルサイト」というHPを作るなど、安全教育の目標である、「実践力を理解」するための、すぐに活用できる資料(動画・教材を含む)が閲覧できるようになっている。今回、ご講話の後に、千葉県でも使わせていただくことに承諾を得たので、今後多くの先生方に活用していただけることを願っている。

澤野次郎先生には、「防災教育と災害伝承の日」を3月11日に提唱しようとした経緯と、これまでの取組についてご講話いただいた。過去の災害から得られた教訓を風化させないために、過去を振り返る日を設定することが重要だと理解することができた。また、地震が多発する日本で生活していくためには、合言葉「津波てんでんこ」のように、住んでいる地域の特色をつかんでおく必要がある。

※警備会社との連携により、複合施設の警備、学校の警備の状況が確認できる。また、細かく警備がされていて、仕切内に入り込むと警備会社に連絡がいくようになっている。

3:講演(13:20〜14:00)

講演 これからの防災(安全)教育〜第3次学校安全の推進に関する計画等から〜
講師 文部科学省総合教育政策局男女共同参画共生社会学習・安全課安全教育調査官 木下 史子先生

学校安全を推進するための5つの方策の内容についてと、内容に沿った実践例として、コミュニティスクールにおける、学校運営協議会と連携した地域について、学校安全ポータルサイトを使った資料について、教職員がもつ意識などについてご講話いただいた。地域の特色を生かした実践であるため、地域差、学校差が大きいが今後積極的に実践校のようにしていくことが5つの方策が求めていることだと理解した。また、東日本大震災で直接被害に遭った人の話を動画の資料は、災害伝承のためにも活用できるため、千葉県下に伝えていきたいと考える。

4:シンポジウム2(14:10〜16:30)

<パネリスト>
文京deぼうさい代表 石瀬 素子先生
江戸川区立一之江小学校 校長 伊藤 秀一先生

石瀬素子先生には、「自助力(生きのびる知恵)の向上と、これを通じた保護者や地域住民の自助の芽生えと自助力の向上」についてご講話いただいた。これまでの「親子でチャレンジ」した防災活動や、消防署員と連携した訓練などを振り返り、課題となったことを踏まえ、今後の活動に生かすとともに、文京区の防災に関する活動の普及を進めていくとのことであった。安全教育を推進するという観点から考えると、「文京deぼうさい」のように安全教育を専門的に扱っている団体が、これまでの実践のように、地域や学校を含め各機関にアプローチをしていくことは、児童生徒等の安全への意識を高めるために大切なことであると考える。

伊藤秀一先生には、江戸川区立一之江小学校の安全教育についてご講話をいただいた。教科横断的にカリキュラム編成をしていることや、各種避難訓練、関係機関との連携など一年間の取組が充実していた。また、一之江小学校は浸水等の災害被害等が懸念される地域であるため、特に、大雨や台風時の防災意識を高めるための取組に力を入れていた。このように、地域により、特に力を入れておかなければならない安全教育があり、各学校は、重点的な取組として構築していくことが大切だと理解した。

(文責:千葉市立西の谷小学校 月野木 諭)